「なんか、嫌な雰囲気!・・・もしかして、これってさっきと同じ道かも?」

愛穂は今にも叫び声を上げたい気持ちを必死に抑えた。

「ここであせっちゃダメよね~、どこか途中に横道があるんだわ・・・。落ち着いて探せば、きっと抜け道が見つかるはず」

アクセルペダルの上の右足の力を更に抜き、それこそ歩くような速さに車のスピードを落として、左右の木々の間に横道を探しながら進んだ。

そしてまた

「この先、通りぬけ出来ません!」

愛穂の駆る軽自動車は、同じ看板のところへたどり着いた。

「どうしよぉ~」

小さな叫び声をあげた所で、枕もとの目覚まし時計が愛穂をその嫌な夢から呼び戻してくれた。

直也にプロポーズをされてから二週間後、二人はお決まりのデートを楽しんでいた。

行きつけのお店でパスタを食べ、他愛もない会話を繰り返した。
その週に直也の会社であった小さな事件のあれやこれやの話を聞かされ、愛穂の意見を求められた。

愛穂はそんな時決まって「直也さんの考え方で良いんじゃない!」と、直也の目をしっかりと見て肯いてみせる。
あんまり深く考えずに、直也がその言葉を愛穂に求めている事に気づいた日から、そうするようになっていた。