この先、通り抜け出来ません!

「僕と結婚してくれないか?」
平川直也からのプロポーズはある程度予感していた。

付き合って2年と3ヶ月、そろそろそんな話が出てもおかしくはない。
直也は5歳年上、二人の年齢を足すとちょうど65になる。

「うん、ありがとう・・・でも、返事は少し待ってもらえるかな?」
愛穂は、直也の目を一瞬見つめたあと、視線を下へ外しながら呟いていた。

断る理由はハッキリ云って何もなかった。
なのに、なぜか即応する気になれなかったのは微妙な女心なのだろう。

「そう、返事はそんなに急ぐ事もないからね。ただ、そろそろ僕の本音を、愛穂には知っておいて欲しかったから・・・」
「うん」

この一年は、もうほぼお決まりになったデートパターンになった。
直也が愛穂の家のある最寄駅まで来るまで迎えに来る、そして食事を共にし、映画を観たり、買い物をしたり、お酒を呑んだり、そして最後は直也の部屋で抱かれ翌朝、愛穂の家の直ぐそばのコンビニの駐車場まで送ってもらう。