「……ヘタクソ」


見事外れたシュートに、悪魔がボソリと呟いた。


「あっちゃー。腕鈍ったなぁ、俺」

「ぜってぇ入んねぇと思ったぜ」


煙を吐き出しながら、嫌みったらしく口の端を上げる悪魔。

その表情は、柔らかい外灯のせいか……どことなく優しい雰囲気を纏っていた。

今のタツ兄の雰囲気と、少し似てる。


……なんとなく、ここに来てからのタツ兄の不思議な言動の意味がわかった気がした。


「隆斗」


穏やかなタツ兄の声。

タンタンタン、と向こうでヤスくんがボールでリズムを刻む音。

少し冷たい夜風が、サラサラと通り抜ける。


「ありがとな。ここ、守っててくれてよ」


悪魔はほんの少し目を見開き、けどすぐに目線を流した。


「……そんなんじゃねぇよ」


ピアスだらけの耳たぶを触りながら、ぶっきら棒な声を落とす。

そんな悪魔を見つめ、タツ兄は優しく微笑んだ。


きっと。

この場所は、タツ兄達にとって“特別”なんだろう。


もしかしたら悪魔がここに来るのは、お金を稼ぐ為だけじゃないのかもしれない。

そうだったらいいなって思う。



悪魔の指に挟まれたままのタバコの灰が、形を崩しながらフワフワと舞い降りていった──……。