黒いロゴ入りのTシャツに、下は制服。

いつもより少し乱れた茶色いアシメウルフに、前髪の金メッシュが輝く。

両手をポケットに突っ込んで、片足に重心を傾けてこちらを見据えた──悪魔がいた。


「よぉ、相変わらずいい動きしてたじゃねぇか」

「てめぇどういうつもりだ」


タツ兄の言葉なんかてんで聞こえてねぇって態度で、悪魔はビリビリ圧力をかけてくる。

眉間に深く刻まれた皺が、彼の怒り度数がかなりのものだと物語っている。


ふと、コンクリートさえ射ぬきそうな鋭い瞳が私を捕らえた。

身体中の筋肉がグッと縮こまる。


「……なんでいんだよ」


聞いただけで失神しかねない刺々しい低音でタツ兄にすごみ、また私に目線を移す悪魔。


そそそ、そんな目で見るなよ!!

気絶しちゃうだろ!?


「可愛いイトコをパシリなんかに使いやがった罰だ」

「あ?」

「心配すんな。ひなたはお前らの事、誰かに言ったりしねぇよ」


え、私!? 私の話!?

あぁ、だからあんなに見つめてたのね!!
納得納得!!


「な?」って笑顔を向けてきたタツ兄に、なんの事かよくわかんないけど、首を何回も縦に振り返しておいた。……超真顔で。