「ストリートバスケってんだ」


タツ兄の声が耳に入ってきたけど、私は広場から目を離す事ができなかった。


3対3。


ここから見てもわかるくらい、周りを圧倒させるプレーを披露する人物。


黒ずんだ茶色いボールを自在自在に操り、華麗に敵をかわしていく。

シュートするかと思ったらクルリと回転して、誰もいない場所からボールを──

シュート!


「おっ! ナイスプレー!」


タツ兄は嬉しそうにそう言うと、観衆の1人にどっちが勝ってんのか聞き始めた。


その間もゲームは進んでいく。


ゲームを動かしてんのは、さっき得点を決めた人物。

敵も彼からボールを奪う事が出来ず、苦しそうに歪んだ表情を見せる。


そして自分に敵が集中してきたところを逆手にとって、味方にパス。


無駄がない、繊細なプレー。

彼がシュートを決める度に盛り上がる観衆。


これが……


悪魔の、もう一つの顔──。