自然と喉に力が入った。
ギュッと締め付けられるような。


……怖い。


悪魔の時に感じたものとは違う、恐怖心。


そんな私を宥めるかのように、五十嵐くんはいつものように優しい微笑みを浮かべた。

そして綺麗な弧を描いた唇を薄く開き、スウッと小さく息を吸い込む──


「じゃあ、よろしくね? 熊谷さん」










「おい」


次の休み時間。

相変わらずの過疎地で、私は頬杖ついて校庭を眺めてた。


「おい」


窓から差し込む日差しは強すぎず、弱すぎず。

春っていいなぁと染々思う。


「おいって」


校庭では、ジャージ姿の男の子達がサッカーしてる。

授業が始まるまで待てないらしい。


あっ! いいパス。


「てめぇ。シカトこいてんじゃねぇぞ」


いけっ!

あとちょっと、あとちょっと……。


「おい、クマタ」


──きたっ!!