声を発したのは……五十嵐くんで。

その台詞に添えられた爽やかスマイルは、悪魔に向けられてて──


って、悪魔に話し掛けた!?
しかも笑顔!?
ど、どういう事!?

何があったの五十嵐くん!!


五十嵐くんが小林くんみたいにボコられんじゃねぇかって嫌な予感が胸を過った瞬間。

伏し目がちだった悪魔の茶色い眼球がスーッと動いて、止まった。

しかし何事もなかったかのように、再び下へ。


……シ、シカト……。

でも、とりあえずセーフ。


「ケガ、治ったみたいでよかったね」


ブホッと口から空気砲を発射しかけた。


いいいい、五十嵐くん!?
なんで!?
もしかして殴られたいの!?
M!? Mなのか!?
逆手を取ってS!?


慌てて見上げた途端──


背筋を僅かに走った、悪寒。


自分の表情が固まったのを感じた。


……目が……笑ってない。

作り物のように冷たい笑顔を貼りつけた五十嵐くんが、そこにいた。

なんで……?


──ふと、五十嵐くんの目線が私に移る。