「熊谷さん」
教室から校庭の桜を眺めていた私に、春風のように穏やかなバリトンボイスが届いた。
悪魔のいる教室は、無関係な者から見れば“異常”な光景がいくつか見られる。
その1つが、授業終了のチャイムが鳴ると同時に起こるこの現象。
ガタガタという椅子の音、パラパラ散っていく人。
悪魔を中心とした半径3メートル程が、瞬時に過疎地と化す。
だから悪魔の隣にいる私に話し掛けてくる人なんて、いないと思ってた。
でも、どうやらそうじゃなかったらしい。
「五十嵐くん。何?」
声と同様、崩しすぎない落ち着いた微笑みを浮かべる五十嵐くんは、今年転校してきたクラスメート。
“イケメン転校生”と転校初日からすでに有名だった彼は、バスケが半端なく上手く、また気取らない温厚な性格から男女問わず人気がある。
さらに女の子の間では“バスケ部の爽やか王子”なんて呼ばれてる。
今も、五十嵐くんの数メートル背後にいるみんなの視線がすごく痛い。
「学習班の仕事なんだけどさ。タケティーが数学のノート集めて欲しいんだって。明日の放課後までに」
「マジ?」
「うん。で、みんなに連絡する係か職員室にノート持ってく係、熊谷さんどっちがいい?」
教室から校庭の桜を眺めていた私に、春風のように穏やかなバリトンボイスが届いた。
悪魔のいる教室は、無関係な者から見れば“異常”な光景がいくつか見られる。
その1つが、授業終了のチャイムが鳴ると同時に起こるこの現象。
ガタガタという椅子の音、パラパラ散っていく人。
悪魔を中心とした半径3メートル程が、瞬時に過疎地と化す。
だから悪魔の隣にいる私に話し掛けてくる人なんて、いないと思ってた。
でも、どうやらそうじゃなかったらしい。
「五十嵐くん。何?」
声と同様、崩しすぎない落ち着いた微笑みを浮かべる五十嵐くんは、今年転校してきたクラスメート。
“イケメン転校生”と転校初日からすでに有名だった彼は、バスケが半端なく上手く、また気取らない温厚な性格から男女問わず人気がある。
さらに女の子の間では“バスケ部の爽やか王子”なんて呼ばれてる。
今も、五十嵐くんの数メートル背後にいるみんなの視線がすごく痛い。
「学習班の仕事なんだけどさ。タケティーが数学のノート集めて欲しいんだって。明日の放課後までに」
「マジ?」
「うん。で、みんなに連絡する係か職員室にノート持ってく係、熊谷さんどっちがいい?」