「佐久間、お前熊谷に教えてやってくれ」

「え!?」


叫んだのは悪魔じゃなくて私。


「てめぇが教えろや」


いつもの威圧的な低音に戻った悪魔は、タケティーを睨みつけてる……と思う。

視界の隅に映ってるから、はっきりとは見えない。

ってか恐くて見れない。


「俺は他の生徒に教えて回らなきゃならんのだ」

「こいつに教えんのも、てめぇの仕事だろうが」

「理解したものを人に教えてこそ完璧な理解と言えるんだぞ、佐久間」

「知るか」

「ちゃんと説明して理解させなかったら、罰として放課後庭掃除。じゃあ頼んだぞ」


タケティー超鬼畜!!
職権乱用!! 教師失格!!


ちょっぴり悪魔に同情してしまった。

でもよく考えると、そもそもの原因……私じゃん……。


そそくさと去っていくタケティーの背中を呆然と見つめていると、クラスメート達が哀れみの視線を私に送っている事に気づいた。


いや、みなさん。
悪いのは私な……


「どこだよ」


隣から発されたダルそうな声に、ビクッと肩が震えた。


今まで聞いていたのと違う。
私に言ってる。

見なくても、相手がこっちを向いてるのがわかる。


私は止まりかけのゼンマイ人形のように、ぎこちなく声のする方へ顔を動かした。