暫しの沈黙。

私は無言でタケティーをチロリと睨んでから、お気に入りのヒヨコ消しゴムでグルグルを消しにかかった。


「おいおい! 2人共俺を睨むなよ!」


どうやら悪魔もタケティーを睨んでたようだ。

タケティードンマイ。
いい気味って思っちゃったけど。


「お、佐久間。正解」


しかし勇者タケティーはそんな事全く気にせず、今日も勇敢に生きる地雷地帯へ飛び込むのだった。


「さすがだな! お前、なにげ勉強できるよなぁ。なにげ」

「クソうぜぇ」

「どうだ? 将来、教師目指してみたら?」

「死んでもやるか」


「言うと思った」と、タケティー独特の豪快な笑い声が、いつの間にか静まり返ってた教室に響いた。


悪魔とタケティーって、なぜかちょっぴり仲が良い。


教師さえも『どうしようもない』と諦めて深く関わろうとしない悪魔に、タケティーだけは他の生徒と分け隔てなく接する。

むしろ、他の生徒より頻繁に話し掛けてる。


そして、そんなタケティーに悪魔もちょっぴり心を許してるように見える。

口調はぶっきら棒で冷たいままだけど、声のトーンが普段よりほんの少しだけ柔らかい気がする。


タケティーと話してる時は“悪魔”じゃなくて、ニンゲンの“佐久間隆斗”に戻ってるような。


そんな気がする。