──……どんくらい歩いた頃か。

小さい丸が、遠くに見えた。


ギラギラと光を放つ白い丸。





走った。



安心しすぎたのか、だんだん意識が朦朧(もうろう)としてくる。


……いや、

心身が得体の知れない何かに支配されていくような……変な感覚だった。



──諦めてたまるか。

そう思って、焦って手を伸ばした俺を、







──愛しい声が呼んだ。










立ち止まり、振り返る。


……なんで気づかなかった?


振り返った先にいた、もうひとつの光に。



「──……か……?」



……今も尚、俺の名を繰り返し呼び続ける声は、


泣いていた。



気づいたら自分の頬にも同じもんが零れてた。

冷たい闇の中で初めて感じた温もりだった。



「そっちに、いんのか……?」



走った。


声のする光に向かって。



なに泣いてんだよバカ、って。


次会ったら、言ってやる。






──なぁ。





会いてぇよ……。