「だ、だから、それを届けるために……」

「あ?」


細く整えられた眉が、グッと中心に寄る。


「お前、人の話聞いてねぇのか」

「は、はい……?」


怒りに歪んでも非の打ち所のない端正な顔は、思わず失神してしまいそうなくらい恐ろしくド迫力で。


もはやザラザラしたコンクリートの地面の感触さえ感じられない。

妙な浮遊感。


「1人で行動すんなっつったろーが。忘れてんじゃねぇぞ、ボケ」

「……え? ……あ」


そういえば以前、玄関前でそんな事を言われたような気がする。


──ぜってぇ1人で出歩くな。

──学校ではなるべく教室にいろ。

──知らない奴とは口きくな。


突然公衆の面前で肩を抱かれパニック状態だった時だ。


「あ、あぁ……」

「……バカが」