無愛想な低い声に、心臓がドクンと波打った。


その声を聞いて気付く。

彼がこの状況から助けてくれるのを無意識に待っていた自分に。


「こっち来い」


……なんか、怒ってる?


ヤスくんより数メートル奥から鋭い視線で私を捕らえる悪魔は、心なしかいつも以上に威圧的なオーラを放っているような気がする。

その証拠かどうかはわからないが、何気にずっと私の隣にいた男子生徒くんが、さり気なく傍から数歩離れた。


「さっさ来い」


動きたくねぇ、そっち行きたくねぇ、倒れてる人達の横通るの怖い。

言いたい事は山ほどあったけど、何より1番怖いのはその凶器眼だと気づき、私はおもむろに1歩を踏み出した。


怒ってる……確実に。

あぁ、もう。
なんでそんなに機嫌悪いのさ。

ってか、え?
私、何しにここまで来たんだっけ?

えぇっと……あっ。
そうだ、封筒。

──って、げっ!?

あんだけ気をつけていたのに、袋のやつ縦皺入ってやがる!!

くそっ、いつの間に……!!