でも、たとえ千代ちゃんに『佐久間くんのおかげでしょ?』って言われたとしても、私は絶対に『違う』と言い張る。


恥ずかしいんだ、どうしても。


もし私と悪魔が恋人じゃなかったら、言えてたかもしれない。

……ううん。
やっぱり私の気持ちの問題なのかも。

悪魔の事を意識し過ぎてんのかもしれない。


「ひなたちゃん、最近変わったよね」

「え?」

「タケティーにヤキモチ焼かなくなった」

「……は!?」


叫びに近い声が出てしまった。

慌てて口を押さえたものの後の祭りで、周囲からの視線がチクチクと突き刺さる。


気まずそうに表情を歪める私に、千代ちゃんは鈴が鳴るようにコロコロ笑うと、さらに付け加えた。

周囲の視線が散らばった頃だった。


「ごめん、冗談だよ。でも、佐久間くんとタケティーが話すの、ひなたちゃんイヤがってなかった?」


優しい声だった。

過ちも、後悔も。
全てを受け入れてくれそうな……優しい声。

真っ直ぐな光の宿った瞳は、強く、それでいて温かい。


なぜか私は、素直に頷いてしまっていた。