「ひなたちゃん、最近頑張ってるよね」


前の席の彼女はこちらを振り向き、綿飴のようなフワフワした笑顔でそう言った。


授業の合間の休み時間。

堅っ苦しい古典の授業から解放された教室は、美しい日本語なんて関係なくガヤガヤ騒がしい。


勉強なんてそんなもんだ。

どんなに頑張っても、日常生活では役に立たないもんが大部分を占めてる。


それでも学ばなきゃなんないのは、ニンゲン社会では勉強は出来た方が何かと有利だからで。

成績がよけりゃ自分のレベルも高くなる。


頭より性格のが大事だよ、なんて言いたくもなるけど、勉強を頑張ってる人ってのは『将来に対して意欲的である』って認められやすいわけで。

結局は、そういう賢い性格が必要なのかもしれない。


「え……私?」


パンパンの引き出しに教科書を詰め込む手を休めないまま、尋ねる。

今日から冬服をやめ中間服に衣替えした千代ちゃんは、微笑んだままコクリと頷いた。