でも悪魔からしてみれば、謝るしかなかったのかもしれない。


だって、あれじゃまるで『勘違いしたそっちが悪い』って悪魔を責めてるみたいだ。

本当に悪いのは、遠回しにしか行動出来なかった私なのに。


謝らせるつもりなんかなかった。

ただ、私の気持ちをわかってほしかっただけで……。


でもよくよく考えると、今さら私が告白せずとも、悪魔はわかってくれてたんだと思う。

あの夜、私が数学のおっさんの事を話した時から、私の気持ちを察してくれてた。


じゃなきゃ、『今さら』なんて言うはずがない。

過去形に出来るはずがない。


悪魔は悪魔なりに私の気持ちを理解してくれてて、そしてそれを受け入れてくれてた。


そういうのって簡単に出来る事じゃないと思う。

現に私は、悪魔の気持ちを理解出来てなかった。
……しかも謝らせてしまった。


後悔しても、時間は巻き戻せない。

だけど、考えれば考えるほど悪魔の『悪かった』が胸に重くのしかかってきて。

私は、何も言えなかった。


「……別に、お前の気持ちは迷惑とかじゃねぇ。でも、」


ゆっくり、顔をあげた。


こちらを真っ直ぐ見つめる瞳は艶やかな橙色に染まっている。