「いやぁ、まさかひなたと佐久間くんがねぇ。佐久間くんって、噂で他校に彼女がいるとか聞いてたけど、やっぱ噂は信じちゃダメだねー。にしても、あの佐久間くんを落とすなんてスゴイね、ひなた。怖いもん無しじゃん」


涼子は本当に楽しそうで、さっきから私の隣で悪魔の話ばっか。


それより、『他校に彼女がいた』って聞いてもヤキモチの“ヤ”の字も感じない私は、本当に悪魔と付き合ってていいのだろうか……。

昔タツ兄に彼女が出来た時さえヤキモチ妬いたのに、悪魔だとそうならないのはなんでだろう。


不思議に思いながらも、それより今は、自分が恋愛話の中心にいる事への違和感の方がずっと大きかった。


昔から、恋愛話をする女友達の会話に上手く馴染めなかった私。


スキとかアイシテルとか。

私にとっては未知なる感情で。


家族や友達に思うのとは違うそれを、私は経験した事がなかった。


いや、経験した事がないと言ったら嘘になる。

それなりに気になる人は今までに何人かいた。

けど、どれも“付き合いたい”とか……そういう強い気持ちじゃなかった。

もしかしたら友達としてのスキだったのかもしれない。