「私、男の人を、その……異性として、本気で好きになった事がなくて。よくわかんないんだ、そういう気持ちが。……でも、佐久間くんに嫌われたり……気まずくなんのは、嫌だ。だから……」


……『だから』?


とんでもない事を口走りそうになった口を、閉じる。


私、今何を言おうとしてた……?


ドクンドクン、と心臓が息詰まる。


私──……?


「だから……その……」

「別に」


濁った曖昧な言葉を、力強く導くような声。

胸を過る、期待と不安。


悪魔の真剣な眼差しが、私に向けられる。


あぁ……。

今、ハッキリ気づいた。


私は──


「それでも構わねぇ」


──私は、きっと。


心の、深い深い奥底で。


悪魔がこう言ってくれる事を、望んでいた──。