どうすればいい?

何か言わなきゃ。


相手が傷ついてるってわかってんだから、このままにしとくわけにはいかない。


急ぎながら、慎重に、言葉を探す。


強い風が吹いた。

前方から遠慮なく流れてくる風は、まるで私を急かしているかのようで。


「さっさ行けや」


悪魔の声がトゲとなり、風に混ざって、胸へと突き刺さる。


──もう考えてる時間は、ない。


「……ごめん」


足下に生えてる名前も知らない小さな白い花を、ただただ見つめていた。


こちらを見上げるそれに、責められてるような気さえした。


「私、ボケッとしてて……深く考えてなくて……ほんとに、ごめんなさい」


悪魔からの返答は、ない。


やっぱり……謝らない方がよかったのかも。


謝ったら、もっと悪魔を傷つけるかもしれない。

わかってはいたけど、これ以外に言葉が見つかんなくて。


こんな自分が心底嫌になる。


こういう時、漫画に出てた主人公の女の子だったら、私なんかには到底真似出来ないような真っすぐな言葉や可愛い仕草で、男の子に向かい合うんだろう。


私は、悪魔の顔さえ見る事ができない。


奥歯を食い縛り、スカートをギュッと握り締めた。