「……お前、まさか覚えてねぇのか」


ドキリ。

図星を突かれ、私は思わずニヘラ、と苦笑いしてしまった。


後から気づく。

ヤバイ。

これじゃ、『覚えてませんでした』って言ってるようなもんだ。


どうしよう……最悪だ。

悪魔がキレても文句のつけようがない、この状況下。

大ピンチ。


冷や汗ダラダラで軽く俯いていると、悪魔の溜息が落ちてきた。

舌打ちじゃなくて溜息。


それが自棄に、ズシリと心にのしかかった。


「……もういい」


悪魔は私に背を向けて歩き出すと、壁に背をつけるようにして座った。


「帰れ」


冷たい響きが、落ち込んでるように聞こえるのは、私の自惚れだろうか。


さっきまで教室に帰りたくて堪らなかったはずなのに。

足が貼りついたみたいに動かないのは、なんでだろう。