「そんな無理してるように見えたかよ、俺……」


どうやら落ち込んでるみたい。

やっぱり、完璧な笑顔のつもりだったらしい。


「すごい不自然だった」

「お前の泣き顔よりマシだ」

「……うるせぃ」


いつもとなんら変わりないやり取り。

ただ決定的に違うのは、私が悪魔に抱きしめられてるって事。


なんだこの状況?って思ったけど、悪魔の腕の中は心地よくて……あと1分くらいならこのままでいいって思った。


ふと、大きな手がそっと私の頬に触れ、顔を少し上に向けられた。


壊れ物を扱うみたいに、すごく大事そうに、長い指が涙を拭っていく。

まるで高級な宝石か、主人に可愛がられてる愛犬になったような気分だった。


指の動きが止まり、伏し目がちだった瞼を開きながら上を向くと──……


「ほんとは」


少し掠れた切ない声の元に


「少しだけ、信用してた」


哀しそうに微笑んだ悪魔がいた。