「大人しく死んでもらおうか」



 とても殺人鬼とは思えないほどにゆっくりと緩慢に、優雅にリオとの間合いを詰めていく吸血鬼。


 リオはその様子を見ながら微動だにしなかった。手も足も表情も、視線さえも動かすことなくこれから自分を殺そうとするのであろう殺人鬼をただ見ていた。

 瞳に映るのは殺人鬼の姿でも恐怖でもなく、ただただ絶望だった。


(私は…、)