そんな物語の中で生きる架空の鬼である“吸血鬼”が平和な町を襲い始めたのはつい最近のことだ。
 もちろん、吸血鬼の存在が信じられているわけではない。あくまで、吸血鬼を真似た殺人鬼だ。


 だれもが知る吸血鬼の特徴をこれでもかと浮き彫りにした殺し。そんな殺人鬼、人々はご希望通り“吸血鬼”と呼んでいる。

 一ヶ月前に始まり、すでに三件起きているその殺人は、あまりに猟奇的で衝撃的だったため、だれもがその動向を気にかけている。



 三件目の殺人は一週間前に起こったと、記憶に新しい。

 しかし、それだけ大々的で大胆な犯行であるにもかかわらず、依然として犯人は捕まらない。警察の捜査も行き詰まり、人々の恐怖心だけが煽られる。



 吸血鬼を真似ていることから、深夜にしか行われない犯行に、人々は決して夜には出掛けない。その分、昼間は少し人の気も弛んでいることは否めない。