少女は一人の友人と道を歩いていた。少女らが歩いている商店街は、学校への通学路となるため、多くの学生たちが通る。
 そして、多くの店舗が軒を連ねるここは夕刻である今が最も賑わう。

 客を呼び込もうと大きな声で客寄せをする店。
 夕食の献立を考えながら野菜を手に取る主婦。
 家族が待つ家の道を足早に歩くサラリーマン。
 冗談を言い合いながらゆったり歩く学生たち。

 いつもと変わりない日常に笑みさえこぼれる。
 しかし、平和というものは永遠に続くものではない。


 少女は友人と世間話をしていた。内容は今世間を騒がせているとある事件。

 吸血鬼―――その単語を聞き思い浮かぶものは何だろうか。
 西洋で生まれたただの御伽噺だと言われれば、その通りだと同意するそんなもの。
 生ける死者で人の生き血を吸う魔物。血を吸われた人間も吸血鬼となり、十字架やニンニクを嫌い、鏡に映ることなく、日光に当たれば塵と化す。文献によってその生態は様々だが、一般にそう伝わる不労不死の鬼。