パジャマだけで上には何も羽織っていないので、途端、冷たい感じがばっと襲いかかってくるけれども、かまわず階段を駆け下りる。

 そうして、ダイニングに飛び込んだ。

 無人。

 次は、調理場。

 やっぱり―― 無人だった。

 え。

 あ。

 もっと落ち着かない気持ちに取り憑かれた。

 ここは、間違いなくカイトの家だ。

 結婚したばかりで、これからはメイの家にもなる場所だった。

 しかし、その家が。

 カイト一人存在しないだけで、こんなにまでよそよそしく感じる。

 まるで、なぜ彼女がそこにいるのか分からないかのように。

 平日、彼が仕事に行っている時とは、全然比べものにならないよそよそしさだ。

 どこに。

 もし、会社に行ったとするならば、書き置きの一つくらいあるのではないだろうか。

 そう思って、ダイニングを探す。

 二階の部屋になかったのは、最初に探したので分かっていた。

 けれども、それらしきものはなかった。

 何で。

 今日は、彼と約束をしていたはずだ。

 引っ越しを手伝ってもらうと。

 でも、カイトのせっかくの休みを潰してしまうので悪いなぁと思っていた。

 だから、最初はハルコに頼もうと思っていたのである。

 勿論、彼女は妊婦なので力仕事は出来ない。

 それを全部自分がするので、車だけ出してもらおうと思っていた。

 前回、彼女が来た時にそれをお願いしたのだ。

 すると、ハルコは困ったように笑った後。

『それは、カイトくんに言ってあげた方が喜ぶわよ』

 それが答えだったのだ。