食料品。

 はがきを5枚。

 白い毛糸をひと抱え。

 編み棒を1組。

『彼のセーター』を1冊。

 帰ってきたメイは、今日の戦利品を眺めて困惑してしまった。

 本当に、買ってきてしまったのである。

 買い物に行く途中、ハルコと車の中でいろいろと話をしたのだ。

「そう…カイト君、今日は遅くなるのね」

 だったら、うちで夕食でもどう?―― そう誘われたけれども、メイは断った。

 いつカイトが帰ってくるか分からないし、どうせだったら、彼と一緒にご飯を食べたかったのだ。

「そう?」

 ハルコは、自分の提案が砕かれたことに残念そうだった。

「でもねぇ、これからしばらく定時には帰れないんじゃないかしら? 結婚式の寸前まで、納期に追い回されそうよ」

 彼女が言うには、もっと早く結婚式も予定に入れたかったらしい。

 しかし、シュウが絶対この日より早くはダメです、とデッドラインを引いたのだ。

 そこから一番早い式、ということで、バレンタインデーに白羽の矢が立ったのである。

「ソウマは平日だからって、最初はちょっと反対したのよ。でも、どうせだったらロマンティックな日が、あなたもいいでしょう?」

 一生に一度なんですもの、ね?

 何日でも別に、と言いかけたけれども、ハルコの言葉には勝てなかった。

 せっかく、彼女のためを思ってしてくれているのである。

 まだ、不安の手には触られてはいるけれども、カイトが承諾してくれた今、ムキになって全てを台無しにする材料は、ないように思えた。

 もう1日たった今でも、やっぱり自覚というものは、いまだ芽吹いてもいないのだが。

 しかし、結婚式という先の話よりも、彼女が言った『納期』という言葉が、二人を引き離すことが分かって―― そっちの方が、憂鬱になってしまう。

 この分では、毎日家の中をピカピカに磨き上げそうだ。

 いや、それでもいいのだが。