カイトが―― いない。

 それが、はっきり分かる。

 メイは身体を起こして、きょろきょろと辺りを見回した。

 カーテンごしに、朝日がこぼれているのは分かる。

 しかし、見える範囲に彼はいなかった。

 慌ててベッドから降りて、カイトを探そうとした。

 もしかしたら、シャワーでも浴びているのかも、と思ったのである。

 しかし、その前に。

 自分の格好を、どうにかしなければならなかった。

「………!」

 毎朝、慣れないことだ。

 声にならない悲鳴を上げながら、メイは慌ててベッドの周囲に散乱しているパジャマたちを拾い上げ、誰も見ているワケでもないのに、毛布の中で毛玉になりながら、急いでそれに着替えた。

 そして、脱衣所へ続くドアを開ける。

 ここにいる―― と思っていた。

 確信ではないけれども、カイトが朝からどこかに行ってしまうとは、思っていなかったのだ。

 しかし、彼はいなかった。

 無人のバスルームは、昨日から使ったような跡はない。

 代わりに、洗面所の床が濡れているのが分かった。

 シャーロックホームズでなくても、その犯人がカイトであることは分かる。

 朝、ここで顔を洗ったのだ。

 この部屋に、彼がいない。

 メイは、途端に不安になった。

 いろいろ考えてしまったのだ。

 もしかしたら、急ぎの仕事が入って会社に行ったのかもしれないとか。

 もっと単純に、喉が乾いたとか何かで調理場の方にいるのかも。

 後者の方を思いついた瞬間に、彼女は部屋を飛び出していた。