「早く、荷物を預けて搭乗手続きをしてらっしゃい」

 ハルコにせかされて、カイトがスーツケースをひっつかむ。

 台風のように、彼はカウンターの方へ行ってしまった。

 メイは。

 さっきまで駆けていたせいで、乱れた呼吸を整えようと必死だった。

 どうやら間に合いそうなカンジに、ホッとする。

「どうして、こんなに遅くなったの?」

 苦笑するハルコに聞かれて―― メイは困ってしまった。

 余りに簡単に言ってしまうと、たった一言なのだ。

『寝坊』

 まぎれもない事実だった。

 いつもならちゃんと目覚ましは、早い内にセットしているのだ。

 でも、昨日の夜はそんなヒマはなかった。

 カイトが。

 メイは、慌てて頭を左右に振った。

 いま甦ろうとした記憶を、飛ばそうと思ったのである。

 こんな時に、思い出すことではなかった。

 ただ。

 結婚式の夜だけでは、カイトの嵐は終わらなかった、ということだ。

 昨日の朝は、いつもの彼とは違う雰囲気を覚えたのだが、夜になるといつも通りというか、何というか。

 ついでに、連想ゲームのように、結婚式の夜まで思い出してしまった。

 翌朝、ベッドから出る時の恥ずかしさと言ったら、他の比ではなかっただろう。

 ベッドの下に散乱する衣服と言えば――ウェディングドレスに、カイトのタキシード、シャツ。

 とにかく、ゴージャスな布地の世界だったのだ。