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 Black・Mondayとは、よく言ったものだ。

 少々使い方は間違っているが、カイトの気持ちもそういうものだった。

「いってらっしゃい」という、残酷な別れを体験して出社したカイトは、週末を邪魔してくれたソウマに、改めて心の中で睨みをきかせると、開発室に乗り込んだ。

 あの訪問客さえいなければ、きっともう少しは、いまの気分もマシだったかもしれないのに。

 こういう時は、プログラムに向かうのが一番のクスリだった。

 既に、週末から家に帰っていないような連中が、何人か見える。

 納期が近づいてくるのだ。

 これから1ヶ月が正念場だった。

 自分のコンピュータの前に、どかっと座りながら、彼は意識を戦闘モードに入れ―― かけた。

「シャチョー! イチハラさんから電話だそうですー! 1番の電話です!」

 どがしゃっ。

 その声で、バトルモードに入りかけたのが、すべて台無しになる。

 こんな朝イチに、しかも会社に、誰が電話だと?

 ばんっ、と1番の電話とやらを掴む。

 コードレスなので、右手に持ち替えながら、自分のコンピュータの前に戻った。

 イチハラ?

 その名前は知っていた。

 しかし、男のイチハラか、女のイチハラかで、彼の反応は結構変わる。

『今日もいい朝だな、調子はどうだ?』

 男のイチハラ―― ソウマの方だった。

 ソウマ・イチハラ。

 それが彼の名前だった。

「何で、こっちにかけてくんだ…ケータイがあるだろうが」

 心底不機嫌な声で対応してやる。

 ここには、メイはいないので、彼にタテに取られることはないだろう。

『昨日の夜からかけてるんだが、全然通じないぞ…電源を切ってないか?』

 そう言われて、はっとした。