メイの。

 瞳が、ゆらっとゆらめいた。

「イヤじゃない?」

 彼の心の中に、まるで指を入れて探るような瞳だ。

 あの細い指で。

「イヤじゃねぇ」

 探る必要などないと、どうやったら彼女に教えることが出来るだろうか。

「本当に?」

「あぁ」

 本当に?

 繰り返される、最後のその問いかけは、言葉にはならならかった。

 彼女の唇だけが、まだ信じられないかのように空気をかすめただけだ。

 カイトは、その空気の言葉には答えなかった。

「用意しろ」

 そうして、掴んだままだった上着に片腕を通すのだ。

 すべての決意をまるごと、その上着の中に押し込めようとした。

「……はい」

 夕食は、普通のレストランになった。

 メイのお願いの目と唇に負けたせいである。

 カイトにとっては理不尽な結果だった。