ああ。

 胃の辺りが、きゅっと収縮するような。

 身体中を震わすような熱い感触が、耳の後ろのざわめきが、唇の内側の緊張が―― 何もかもが、溢れる思いを止めきれなかった。

「カイト…わたし…」

 喉の奥がつまって、うまく言葉に出来ない。

 嬉しいのか切ないのか苦しいのか、分からない。

 幸せというものは、もっと甘く柔らかいものではないのだろうか。

 温かくて、優しいものの姿をしているんじゃないのだろうか。

 でも、きっといま胸の内に溢れる気持ちも、それと同じ場所にあるはずなのだ。

 好きじゃ、足りない。

 その言葉を伝えても、いまの彼の言葉には追いつけない。

 ああ。

 苦しいのに、気持ちをきちんと伝えられなくて、もどかしい。

 でも、彼の言葉に応えたい。

「……!」

 カイトが、驚いた身体を固くしたのが分かった。

 けれど、止められない。

 メイは身体を伸ばすようにして―― カイトを抱きしめた。