「何を気取っちゃって。お酌されたお酒くらい、付き合いでも飲むのが礼儀でしょ!」

 ツーンだ。

 すっかりご機嫌ナナメになってしまったハナは、副社長とは反対の方を向いた。

「せやせや…まったくやなぁ」

 すると。

 いつの間にか、反対隣にワンコの社長が来ているではないか。

 瞬間移動したかと思ったが、彼女と副社長がお酌騒ぎをしている時に、こっち側に回ってきたらしい。

 この男も、何か変だ。

 ワインは開ける、チーズは持ってくる。

 挙げ句、お酌までしてくれる。

 何か、自分が弱味でも握っているのではないかと思いたくなるが、酔っていなかったとしても、ハナはその事実を見つけることが出来なかっただろう。

「そんなことはありません…付き合いで、最低限の飲酒はたしなみます」

 なのに。

 またも、ずいっと2人の間に、副社長が首を突っ込んでくる。

「ムッ…」

 ワンコのシャチョーが、表情を険しくして。

 バチバチバチッッッ。

 見えない火花が、ハナを置き去りに2人の男の間で散りまくった。