そうじゃないって……。

 メイは、近くまで目の高さを下げてくれた、カイトの顔をじっと見てしまった。

 彼は、どんな表情で止めていいのか分からないかのようで、怒ったような困ったような苦しいような、いろんな感情を顔の中で渦巻かせている。

 その中から、カイトの真意を計るのは、すごく難しかった。

 2人。

 階段で座り込んだまま、うまく言葉も気持ちも交わせないでいる。


 誓いますか?


 誓います。


 結婚式で、そんな言葉を交わした。

 彼との生活は、あんな風に分かりやすい言葉ばかりではないのだ。

 じっと彼を見つめていると―― 視線が、横にそらされた。

 奥歯を、一度強く噛みしめるような顎の動き。

「ワリィのは…」

 ぼそっ。

「ワリィのは…オレだ」

 最後は、長いため息と共に、まるで罪を告白しているかのような声で小さく呟かれた。