クソッ! クソッ!!!

 たかが、エレベーターの数秒間の接触の後、またもカイトは公共のエリアに放り出されてしまったのだ。

 どれもこれも、彼の気持ちを邪魔するものばかり。

 ほんのわずかの時間しか、2人きりにはさせないのだ。

 いまのカイトにとっては、世界の全てが、自分たちを引き離そうとしているようにしか思えなかった。

 んなとこに、いられっか!

 カイトは、彼女の腕をまたも掴むと、エレベーターの前にいた連中を跳ね飛ばすような勢いで、狭い箱を飛び降りたのだ。

 彼が、唯一落ち着ける空間は、こんなところじゃない。

 もう!

 見せ物の時間は終わりだ!

 自分で自分にそう怒鳴りつけた彼は、ロビーを横切り。

 ついには。

 バタン!!!!

 タクシーの後部座席にメイを押し込み、自分も乗り込んだのだった。

「出せ…」

 一分一秒でも。

「は?」

 いきなりの珍客に、タクシーの運転手は目を丸くして振り返った。


「いいから、出せ!!!!」


 一秒でも早く――!!