●92
どうしたの????
腕を引っ張られながら、メイは必死で彼についていった。
お色直しの時に、いきなりカイトが殴り込んできて、理由を説明することなく、彼女をどこかへ連れて行こうとする。
彼女の方は、と言えば―― 背中の途中までおろされたファスナーのまま、走りにくい危険なハイヒールを、蹄のように鳴らしながらの移動だった。
バージンロードを駆け抜けた時よりも、もっと速かった気がする。
彼らが通り抜ける瞬間、周囲の人がぎょっとした視線を向けた。
当たり前だ。
彼らは、どう見ても本日主役の、新郎新婦以外の何者でもなかったからだ。
エレベーターに差し掛かり、ちょうど降りてきた人とすれ違いに、その箱の中に放り込まれる。
あっと思った時には、彼女は奥の壁に手をついて自分の身体を支えていた。
いや、壁じゃない。
そこにはガラスが入っていて、いまの自分の姿を大アップで見ることとなったのだ。
自分だけじゃない。
イラついた指で、「閉」のボタンを押したカイトの動きも、くっきりと映っていたのだ。
そして。
下に向かって、エレベーターが動き出した途端。
彼が、こっちを見たのが分かった。
鏡ごしに、はっきりと目があったのだ。
一歩。
鏡の中の目が、自分を捕らえたまま、強い一歩が彼女の方に踏み出された。
余り広くないエレベーターの中に、パニエでふくらみを持たせたふんわりドレスがあるのだ。
その一歩で、彼の足がドレスの領域を侵犯した感触が伝わる。
あ。
肌に触れている空気さえも、痺れさせるような何かがそこにはあった。
どうしたの????
腕を引っ張られながら、メイは必死で彼についていった。
お色直しの時に、いきなりカイトが殴り込んできて、理由を説明することなく、彼女をどこかへ連れて行こうとする。
彼女の方は、と言えば―― 背中の途中までおろされたファスナーのまま、走りにくい危険なハイヒールを、蹄のように鳴らしながらの移動だった。
バージンロードを駆け抜けた時よりも、もっと速かった気がする。
彼らが通り抜ける瞬間、周囲の人がぎょっとした視線を向けた。
当たり前だ。
彼らは、どう見ても本日主役の、新郎新婦以外の何者でもなかったからだ。
エレベーターに差し掛かり、ちょうど降りてきた人とすれ違いに、その箱の中に放り込まれる。
あっと思った時には、彼女は奥の壁に手をついて自分の身体を支えていた。
いや、壁じゃない。
そこにはガラスが入っていて、いまの自分の姿を大アップで見ることとなったのだ。
自分だけじゃない。
イラついた指で、「閉」のボタンを押したカイトの動きも、くっきりと映っていたのだ。
そして。
下に向かって、エレベーターが動き出した途端。
彼が、こっちを見たのが分かった。
鏡ごしに、はっきりと目があったのだ。
一歩。
鏡の中の目が、自分を捕らえたまま、強い一歩が彼女の方に踏み出された。
余り広くないエレベーターの中に、パニエでふくらみを持たせたふんわりドレスがあるのだ。
その一歩で、彼の足がドレスの領域を侵犯した感触が伝わる。
あ。
肌に触れている空気さえも、痺れさせるような何かがそこにはあった。