久しぶりに出会ったハルコと、さっき話をしたのだが、彼女はとても幸せそうだった。

 旦那様にも紹介してもらったが、これもまた、好感の持てる男性で―― かなり、羨ましいとさえ思ってしまったのだ。

 しかし、そのハルコの夫が、あの伝説の主であるとは、とてもじゃないがリエは信じられなかった。

 変な噂には耳を閉じるようにしているのだが、そうしていてなお、『秘書誘拐伝説』は、彼女の耳に飛び込んできたのである。

 余り見ると失礼だったので、リエは視線をそらしたが。

 そんな事実を全部並べて考えると、男という生き物は、女の想像を遙かに超える常識外れということになってしまう。

 いえ、そんなことはないわ、と何度も自分に言い聞かせている祝宴の時。

 WANTED CORPORATIONの社長が近づいてきて、軽い言葉をマシンガンのように浴びせていってくれた。

 これが、更に彼女の考えを、証明したかのように思えてしまったのだ。

 友人代表として、ハルコの夫は楽しそうにしゃべっているが、リエとしては、これからの鋼南電気の評判や、他社からの電話応対など、いろいろ考えなければならなかった。

 どこで不意打ちの質問や、ひやかしが来るか分からないのだ。

 男性不信になりそうだわ。

 リエは、その綺麗に整えた眉を揺らしながら、深いため息をついたのだった。