一体。

 メイは、一体どこに引っ越しをするつもりなのか。

 彼女の家は、もうここではないのか。

 それとも、オレが何か――

 頭の中は、とんでもない化け物どもの巣になってしまった。

 もう夕食どころの騒ぎじゃなく、言語中枢どころか、ほとんどの思考機能まで停止に追いやられようとしていく。

 このままでは、彼のエンジンまで止まってしまいそうな勢いだった。

「いつまでも、アパート…あのままにはしておけないから、引き払わないと」

 その言葉で。

 どんなにカイトが救われたことか。

 すべてのロックが一気に解除され、全身が恐怖の縄から解き放たれる。

 はぁ、と。

 カイトはほっとしたため息を漏らした。

 彼女の言う『引っ越し』とは、この家から出ていく、という意味のものではなかったのだ。