☆91
 さてさて。

 主役はいなくても祝宴が進むのが、披露宴のよいところでもあり、悪いところでもあり。

 本来ならば、カイトはまだその席に座っているはずだったのに、ちょっとからかっただけで会場を飛び出してしまった。

 彼女がいないと、まったく我慢の出来ない男である。

 やれやれと呆れながら、次が友人代表挨拶であることを思い出す。

 本当ならば、祝宴の始めの方にあるものなのだが、あんまり早くにすると、カイトが怒って披露宴が台無しになるのではと思い、わざわざソウマとハルコで後ろの方にずらしたのである。

 友人代表でマイクの前に立つのは、勿論―― ソウマだった。

 いや、別に怒らせようという気はないのだ。

 ただ、ちょっと本当のことを言うだけで、カイトが怒るのだからしょうがない。

 よほど、メイに惚れているという事実を、人に知られたくないようだ。

 弱点だとでも思っているのだろうか。

 いや。

 ソウマは、笑った。

 弱点そのものだったからだ。

 あそこまで、カイトがみえみえの可愛い態度をとってしまうのは、全て彼女が絡んでいるからである。

 目の中に入れても、痛くないどころの話ではなかった。

 ベタ惚れという言葉でも足りないくらいで。

 さあて。

 そろそろ、もう一度マイクの前で言うことを、頭の中でおさらいでもしておくか―― ソウマは、新郎が怒るからと言って、しゃべる内容を変更したりする気はなかった。

 そんな時。

 いきなり、ホテル側のスタッフの出入りが激しくなった。

 招待客に気づかれないように、端のほうでヒソヒソやっては会場を飛び出し、また戻ってきては何かと相談を繰り返している。