いきなり、おたふくのように両の頬を腫れ上がらせてしまったユウは、うわーんと泣きを入れてしまった。

 ただ彼は、ゲームについて詳しく知りたかっただけなのだ。

 それなのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか、子供心に全然理解出来なかった。

「申し訳ありません、うちの愚息が…おほほほほ」

 いまの自分の仕打ちをごまかすかのように、鋼南電気の人たちに頭を下げると、母親はユウをずるずると引きずって行こうとする。

「うわーん! まだいるのー! お話するのー!!」

 そんな叫びも空しかった。

 そして、ユウにとっては、最も怖い事態が起きた。

 席替えをされてしまったのだ。

 いままでは、母親の隣だったのに、いきなり父母に挟まれるように、真ん中の席に押し込まれてしまったのである。

 うちで一番怖いのは、母じゃない。

 ジロリ。

 顔を上げると、父親の見下すような睨みとぶつかる。

 それだけで、動物はきっと身の危険を感じて、逃げて行くに違いなかった。


 うわーん!!!


 世間の厳しさを、まず家族から体験しているユウだった。