カイトだって、こんなに急展開で、自分がメイという存在に突き落とされるとは思ってもいなかったのだ。

 そんなことを考えていると、急に喉が乾いた気がして、ムスッとしたままテーブルの水を飲み干そうとした。

 祝辞の最中に、横柄な態度だと思われても、もうどうでもよかったのだ。

「社長が、こんな綺麗な女性を射止めてあったとは思ってもみませんで…今度、是非その手管を教授していただきたいと思っています」

 が。

 ゴホッ、ゴホッ!

 カイトは、飲み込んだ水が変なところに入ってしまって、思い切りムセてしまった。

 自分に、一気に視線が集中するのが分かっていても、ひとしきりセキを止めることが出来なかった。

 何てことをいうのか!

 喉の辺りを一度強く押さえた後、カイトはギロリとチーフを睨みつけた。

 メイを綺麗と言われたのにも引っかかったし、どうやって射止めたのかなど、口が裂けても誰にも言えなかった。

 たとえ、それがよくある慣用句であったとしても―― 新婦を見る前から、原稿を書いていたとしても、カイトにとっては面白くなかった。