結婚式は、ほぼすっぽかてしまったタロウだったが、披露宴は最初から席についていた。

 大体、こういう式や宴自体で、ウキウキする材料はない。

 日々、楽しく生きていくことをモットーとしているタロウでも、さすがに今回は、仕事上の付き合いの色が強いのだ。

 そんな彼の、唯一の楽しみは。

 おっ、ええ女おるやん!

 新郎新婦の入場が始まる直前に、彼は1人の女に目をつけていた。

 席からすると、おそらく鋼南電気の社員の1人だろう。

 髪をアップにして、いかにも『私は仕事が出来ます』という雰囲気を匂わせている、ちょっと気の強そうな女で。

 しかし、どこかで見たような。

 いつもの服とは違うし、髪型も違う。

 だから、一瞬タロウは迷ってしまった。

 が、頭の中の検索サーバーは有能で、見事に思い出したのだった。

 彼女は―― 誰あろう、社長秘書だったのだ。

 けど、あれは高嶺の花やな。

 目の保養をしつつ、しかし、タロウはそう感じていた。

 気の強い女は、彼は大好きだ。

 女であろうとも、やはり自分の夢やパワーや自信なんかを持っているタイプを見ると、視線を持っていかれてしまう。

 バリバリのキャリアウーマンを見ると、「たまらんなぁ」と呟くことしばしば。

 女は、女というだけでみんな美人に見えるが、それ以上の付加価値を持たれると、なお美人に見える。

 しかし、あの社長秘書は、彼の好みからするとちょっと違うような気がする。

 夢と言うよりも、自尊心の方が前に出ているようだった。

 リエとは、タロウで言うところの、「惜しい! 95点や!」になるのだ。

 ちなみに、女が90点以下を取るのは、かなり彼の中で難しいことだったが。

 そうして、他の女性を物色しようとした時に。

 場内が、ぱっと暗くなってしまった。

 主役たちが、入場するのだ。

 あかん。

 タロウは、自分が失敗したことに気づいたのである。

 赤外線スコープ持ってこな、あかんかった。


 ちなみに、彼の家には―― ミリタリーグッズがいっぱいあった。