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「では、入場の準備を」

 全員、披露宴会場に入ってしまったらしく、一度会場へのドアは閉ざされた。

 ドアの外に残されたのは、カイトと自分と、そしてソウマ夫妻だけとなる。

「入場って、まさかまた…?」

 ギロリ。

 カイトの強い睨みがソウマに飛んで、びっくりしてしまった。

 その視線にもびっくりしたのだが、メイの身体が、ぐっと彼の腕に引っ張られてしまったのだ。

 カイトの後ろに、押し込むかのように連れられる。

 何だか。

 タキシードの背中を見ながら、メイは顔を熱くしてしまった。

 何だか、大事なもののように隠されている気になったのだ―― 誰かに取られないように。

 今日は、特別な日だから。

 彼女はそう自分に言った。

 だから、きっと魔法が続いているに違いないのだ。

 カイトも、結婚式という空気に、感化されたのだろうか。

 こうやって背中に庇われると、信じられないくらいの幸せに襲われて、打ちのめされる。

 めまいがしそうだ。

 実際問題、この時、彼女は目の前が少し暗くなった。

 軽い立ちくらみだったので、すぐに戻ってきたけれども。

 思えば。

 今日は、朝食どころではなかった。

 それから、ドレスを着る前にビスチェでぎゅっと締め上げられ、緊張の連続である。

 挙げ句の果ては、幸せの嵐。

 身体中も心中もびっくりしてしまって、血の流れさえおかしくなってしまったように思えた。

 ふぅと深く息をついて、自分の中の鼓動を落ち着ける。