鋼南電気社長という木である。

 ミンミンミンミン。

 メイの旦那になった男というだけで、さして親しい間柄でもないというのに、ユウセミは、それはもう大興奮でゲームについて語り出してしまったのだった。

 今日が結婚式で、これからも披露宴があるということを、本当に理解しているのだろうか。

 はぁとリンは一つため息をついて、夫に目配せをした。

 ぬっ。

 彼が動く時は、いつもそういう擬音がついているような気がする。

 そんな音とともに、最終兵器のマサが動き出し、ユウの襟首をぐいと引っ張ったのだった。

「いやー! もっと、ゲームのお話するの~!!!」

 まさしく、セミを捕まえた瞬間のように、大声でわめきちらされるが、夫は容赦ない。

 ちなみに、リンも容赦ない。

 そんな容赦ない夫婦に育てられて、よくもまあ、こんな性格に育ってしまったものだ。

 我が子ながら、不思議でしょうがなかった。

「昔のお前に…そっくりだ」

 控え室を出ていきながら、マサがぼそっと言った。

 リンは、その大木のスネを、思い切り蹴っ飛ばしたのだった。