招待状が来ていた―― 鋼南電気の社長からだ。

 シンは、封筒の差出人を眺めていた。

 年下だが、面白いソフトを作ることで有名な男である。

 ついでに言うと、同業者の中には、彼をよく思っていないところも多い。

 彼の、強引な経営手腕が問題らしい。

 賛否両論、はっきり別れる男だ。

 仕事柄、何度か顔を合わせているが、別段シンと問題が起きたことはなかった。

 それどころか、静かな態度での対応ばかりだ。

 ライセンスの件で鋼南の本社にも訪問したが、会社全体もいい活気に満ちていた。

 そんなところから、おそらく会社の立場上の義理ではあったろうが、招待状が届いた。

 相棒は、『別に無理して出る必要はありませんよ』と言ったが、イヤだとも思わなかったので、出席することにした。

 普通は、披露宴だけ呼ばれるものだったが、式にも呼ばれていたので、彼は教会に現れたのだ。

 締め慣れない白いネクタイの自分を、鏡で見た時、違和感は禁じ得なかった。

 しかし、それはきっと周囲の男たちは皆そうだろう。

 日常で、締める色ではないのだから。

 式は、とどこおりなく終わった。

 違うところと言えば、普通と比べてやや騒がしかったくらいか。

 しかし、シンにとっての事件は、その後で起きた。

「雪…か」

 冷えると思ったら、風がうなるようにしてそれを連れてきたのだ。

 雪の日に、1人の女と別れたことを思い出す。