「はい、こっち向いてね」

 ハルコに促されて、メイは独身女性の群れに背中を向けた。

 へぇ。

 何故か、そのシステムにちょっと感心してしまった。

 誰に目標を定めるワケでもなく、本当に運まかせで投げるのだ。

 メイが、軽く香りをかぐように。

 いや、まるで別れを惜しむように、白薔薇のブーケに一度顔を埋めた。

 その伏せた瞳の横顔が、カイトの視線を釘付けにする。

 すぅっと。

 寒空に吸い込まれるように、ブーケが空を舞った。

 白い花が、白い弧を描いて、白い―― あっ!

 ぶわっと、強い風が吹いた。

 2月の冷たい風だ。

 つむじのように円を描いて、いたずらに花の軌跡を振り回す。

「あっ…」

 背中を向けたままの、メイが。

 声を出した。

 まだ、誰の手にもブーケは渡っていない。

 落ちる寸前の花よりも早い、たった一言。

 白く降る。

 花は、白い指に抱き留められた。

 けれども、まだ白く降る。


 雪だ。