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 終わった……。

 カイトのいまの気持ちは、まさしく「ぐったり」、というのが一番正しかった。

 本当に、彼女が望むような理想の式になったかはナゾなのだが、カイトとしては最大限に努力したつもりだった。

 片っ端から、穴に足を突っ込んで回ったような気がしないでもないが。

 しかし、これで晴れて自由の身になれるに違いない。

 とっととこの教会を退場して、窮屈なこの衣装から逃げ出してやると思っていたカイトは―― この後、披露宴があることを、すっかり失念してしまっていた。

 しかし。

 披露宴の前に、もう一つ二つ、式の続きが残っていたのである。

 ブーケトス?

 リハーサルでやったことでさえ忘れているカイトだったから、実際やっていないことに関してはまったく分かっていなかった。

「そうよ、花嫁さんがブーケを投げて、それを独身女性が受け取るの…その独身女性が、次の花嫁になると言われているわ」

 ご丁寧に、ハルコが解説してくれる。

 何となく、聞いたことのあるような話だった。

 まあ。

 その場合、主役はメイなのだから、自分は何もしなくていいのだろう。

 それくらいなら、もうしばらく我慢していてもよかった。

 カイトは憮然としながらも、聖堂の入り口まで彼女をエスコートしてきた。

「はい、ここよ」

 2人の立ち位置まで、しっかり決められる。

 少し高い段差の上で、メイがブーケを軽く握り直す。

 責任重大だとでも言わんばかりの、集中したような表情をしていた。

 聖堂前では、独身女性の華やかな衣装で群れが出来ている。

 わざわざブーケをもらうために集まってきたのだ。

 関係ない連中は、脇に除外させられているようである。

 その光景に、メイは深呼吸までしていた。

 ブーケを受け取った女が、次の花嫁とやらになるかどうかなんて、結局は迷信なのだから、そんなに気合いをいれなくてもよさそうなものなのに。

 しかし、そんな彼女さえ愛しい。