「しょうがないですねぇ…まあ、新郎さんは凛々しくてもいいでしょう」

 どうしても、笑顔にならないカイトに、ついに観念したかのように、カメラマンはファインダーを覗き込んだ。

 メイは、カメラを前に笑ってるカイト―― というものを一瞬想像してしまった。

 しかし、想像の中の視界は、オールクリアではなかった。

 どうしても、顔の部分だけに靄がかかっているのだ。

 カイトには爆笑されたことはあるが、優しく微笑まれた記憶がなかった。

 でも、それもまた彼の性格なのだ。

 無理に優しくされるより、ありのままがいいということは、過去何回か感じたことがある。

 いまあるカイトを、大事にしたかった。

 だから。

 写真は、これでいいのだ。

 いつも、少し不機嫌そうなカイトの横で、自分が微笑んでいる。

 それが、一番『らしい』2人なのかもしれない。

 カイト…。

 その名前を思うと、いつも心が締め付けられる。

 そんな笑顔になった。