●81
「はい、最初はお二人だけで」
大仰なカメラを持ち出したプロのカメラマンが、それを目の前に据える。
その向こう側には、たくさんの人たちの顔が見えていた。
こんなところで、見せ物のまま写真を撮られなければならないのだ。
いままでの気恥ずかしさの積み重ねも、ピークになりつつあり、メイはドレスの裾や角度を調整されるがままに、ただ立っているしか出来なかった。
本当は式の中に織り込むより、別撮りをしようとしていたのだが、カイトの忙しさのために、結局当日になったのだ。
それが、こんなところで仇になったのである。
「ほら、腕を組んでください」
しかし、惚けているヒマはなかった。
きびきびとした、カメラマンの指示が飛ぶのだ。
相手は、こういう写真を山ほど撮ってきたプロなのだから、どうすれば一番綺麗に撮れるとか、ステキに撮れるかとかを知っているワケで。
それに従おうと、メイは手袋をした腕を持ち上げた。
ためらいがちに、隣のカイトの腕に触れようとすると、その遠慮がちさが気に入らないかのように、強く肘を突き出される。
手袋は、ただ生地が白いだけなのに、彼のタキシードを白く汚してしまいそうな錯覚にかられる。
教会で、こうやって腕を組むのは、これが初めてだった。
本来なら、ヴァージンロードで体験するはずだったものなのに。
突き出された肘に、それでもそっと触れる。
「はい、もっと2人くっついて。もっと、もっと!」
腕を組んでいるだけでは飽きたらず、更に2人を近づけようとするのだ。
もっと、って。
ドレスの内側のパニエが、彼らの接触を邪魔しようとする。
あんまり近づけたら、カイトをドレスの海に沈めてしまいそうだった。
「はい、最初はお二人だけで」
大仰なカメラを持ち出したプロのカメラマンが、それを目の前に据える。
その向こう側には、たくさんの人たちの顔が見えていた。
こんなところで、見せ物のまま写真を撮られなければならないのだ。
いままでの気恥ずかしさの積み重ねも、ピークになりつつあり、メイはドレスの裾や角度を調整されるがままに、ただ立っているしか出来なかった。
本当は式の中に織り込むより、別撮りをしようとしていたのだが、カイトの忙しさのために、結局当日になったのだ。
それが、こんなところで仇になったのである。
「ほら、腕を組んでください」
しかし、惚けているヒマはなかった。
きびきびとした、カメラマンの指示が飛ぶのだ。
相手は、こういう写真を山ほど撮ってきたプロなのだから、どうすれば一番綺麗に撮れるとか、ステキに撮れるかとかを知っているワケで。
それに従おうと、メイは手袋をした腕を持ち上げた。
ためらいがちに、隣のカイトの腕に触れようとすると、その遠慮がちさが気に入らないかのように、強く肘を突き出される。
手袋は、ただ生地が白いだけなのに、彼のタキシードを白く汚してしまいそうな錯覚にかられる。
教会で、こうやって腕を組むのは、これが初めてだった。
本来なら、ヴァージンロードで体験するはずだったものなのに。
突き出された肘に、それでもそっと触れる。
「はい、もっと2人くっついて。もっと、もっと!」
腕を組んでいるだけでは飽きたらず、更に2人を近づけようとするのだ。
もっと、って。
ドレスの内側のパニエが、彼らの接触を邪魔しようとする。
あんまり近づけたら、カイトをドレスの海に沈めてしまいそうだった。