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「はい、最初はお二人だけで」

 大仰なカメラを持ち出したプロのカメラマンが、それを目の前に据える。

 その向こう側には、たくさんの人たちの顔が見えていた。

 こんなところで、見せ物のまま写真を撮られなければならないのだ。

 いままでの気恥ずかしさの積み重ねも、ピークになりつつあり、メイはドレスの裾や角度を調整されるがままに、ただ立っているしか出来なかった。

 本当は式の中に織り込むより、別撮りをしようとしていたのだが、カイトの忙しさのために、結局当日になったのだ。

 それが、こんなところで仇になったのである。

「ほら、腕を組んでください」

 しかし、惚けているヒマはなかった。

 きびきびとした、カメラマンの指示が飛ぶのだ。

 相手は、こういう写真を山ほど撮ってきたプロなのだから、どうすれば一番綺麗に撮れるとか、ステキに撮れるかとかを知っているワケで。

 それに従おうと、メイは手袋をした腕を持ち上げた。

 ためらいがちに、隣のカイトの腕に触れようとすると、その遠慮がちさが気に入らないかのように、強く肘を突き出される。

 手袋は、ただ生地が白いだけなのに、彼のタキシードを白く汚してしまいそうな錯覚にかられる。

 教会で、こうやって腕を組むのは、これが初めてだった。

 本来なら、ヴァージンロードで体験するはずだったものなのに。

 突き出された肘に、それでもそっと触れる。

「はい、もっと2人くっついて。もっと、もっと!」

 腕を組んでいるだけでは飽きたらず、更に2人を近づけようとするのだ。

 もっと、って。

 ドレスの内側のパニエが、彼らの接触を邪魔しようとする。

 あんまり近づけたら、カイトをドレスの海に沈めてしまいそうだった。