ということは、さっきパシャパシャ撮られた写真の中に、彼女の顔は映っていないということである。

 面白くもない、自分の顔だけが。

 ムカムカ。

 手際の悪い自分に腹を立てながら、カイトは彼女のヴェールに指をかけた。

 あんまり変に力を入れると、破いてしまいそうな軽い布だ。

 そういうものを、扱うのに慣れていない自分の指を抑えながら、彼はゆっくりとそれを持ち上げた。

 そのまま、後ろに持っていけば―― !!!

 カイトは、息を止めた。

 目を見開いた。

 白いヴェールの内側から、白い彼女の顔が現れたのだ。

 白い肌、赤い唇。

 そして、少し潤んだ茶色い瞳。

 それが。

 その瞳が、カイトをじっと見ていた。

 思えば、ウェディングドレスを着たメイを見たのは、本当の意味で、この瞬間が初めてだったのだ。

 いままで、隣にいるのは彼女なのだと、信じているしかなかった。

 顔は、ほとんど見えなかったからだ。

 しかし、いざヴェールをはがすと。

 そこには、予想なんかとは比べものにならない、本物のメイがいたのである。