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「続きまして、永久の愛を誓う口づけを…」
口づけ。
こっぱずかしい指輪の交換が終わるや、更にこっぱずかしいの上塗りをするような行為を、ここでやれと言われるのだ。
いや、確かにそれはリハーサルの時にも、式次第の中に盛り込まれていた。
しかし、実際リハーサルでしたワケではない。
そう言われたら、軽く唇を触れ合わせるだけでいいですから―― とか何とか、進行役の男に言われたような記憶があっただけだ。
こんなところで。
カイトは、汗を浮かべた。
指輪の交換が終わってもまだ、カメラマンたちはそこに陣取ったままだったのだ。
今度こそは不意打ちにも負けず、いいものを撮影しようという気迫が伝わってきて、彼を壁際へと追いつめていく。
『舌は入れるなよ』
不意に、ここに入ってくる前にソウマに言われた言葉がプレイバックして、瞬間的に怒りの熱が上がる。
誰がするか!
しかも、こんな人前で。
こうなったらさっきの指輪よりも、もっと素早く終えてしまう他なかった。
これも。
これも、結婚式を望んだメイのためなのである。
カイトは、自分にそうぐっと言い聞かせて、暴れ出したい衝動を抑えたのだ。
深い吐息を一つついて、ワイヤーロープのような覚悟で自分をぐるぐる巻きにしてから、いざ。
ん?
しかし、現実は『いざ』もへったくれもなかった。
このままでは、キスなんて出来るはずもない状態だったのである。
メイの顔には、白い薄布がかぶったままだったのだ。
ハッ!
そこで、カイトは思い出してしまった。
リハーサルでは、指輪の交換の時にそれを持ち上げるように言われていたのだ。
野次馬どもに気を荒くしていたために、すっかり忘れきっていた。
「続きまして、永久の愛を誓う口づけを…」
口づけ。
こっぱずかしい指輪の交換が終わるや、更にこっぱずかしいの上塗りをするような行為を、ここでやれと言われるのだ。
いや、確かにそれはリハーサルの時にも、式次第の中に盛り込まれていた。
しかし、実際リハーサルでしたワケではない。
そう言われたら、軽く唇を触れ合わせるだけでいいですから―― とか何とか、進行役の男に言われたような記憶があっただけだ。
こんなところで。
カイトは、汗を浮かべた。
指輪の交換が終わってもまだ、カメラマンたちはそこに陣取ったままだったのだ。
今度こそは不意打ちにも負けず、いいものを撮影しようという気迫が伝わってきて、彼を壁際へと追いつめていく。
『舌は入れるなよ』
不意に、ここに入ってくる前にソウマに言われた言葉がプレイバックして、瞬間的に怒りの熱が上がる。
誰がするか!
しかも、こんな人前で。
こうなったらさっきの指輪よりも、もっと素早く終えてしまう他なかった。
これも。
これも、結婚式を望んだメイのためなのである。
カイトは、自分にそうぐっと言い聞かせて、暴れ出したい衝動を抑えたのだ。
深い吐息を一つついて、ワイヤーロープのような覚悟で自分をぐるぐる巻きにしてから、いざ。
ん?
しかし、現実は『いざ』もへったくれもなかった。
このままでは、キスなんて出来るはずもない状態だったのである。
メイの顔には、白い薄布がかぶったままだったのだ。
ハッ!
そこで、カイトは思い出してしまった。
リハーサルでは、指輪の交換の時にそれを持ち上げるように言われていたのだ。
野次馬どもに気を荒くしていたために、すっかり忘れきっていた。